CSP幼児版管理者・小平真人さん
コモンセンスペアレンティング(以下、CSP)を学んだきっかけを教えてください。
きっかけは、施設がCSPを導入したことです。 入社当初の自分を振り返ると子育てということを全く知らない「子育て経験ゼロ」の状態でした。大学では特に児童分野を専攻していなかったのですが、卒業と同時に児童指導員任用資格を取得し、この現場に入りました。
CSPを学んだ後、どのような変化がありましたか?
学ぶ前を一言で表すと「余裕がない」状態でした。子育て経験ゼロということもあり、子どもの問題には怒ったり、大きな声で怒鳴ったりしていました。怒鳴ってばかりだったので、子どもからも怖い職員と言われていました。
しかし、CSPを学んで「子どもが幸せになることは何が必要なのか?そのために自分に何ができるか?」ということを考えるようになりました。怒ることから、教えることへと、大きく変化したのです。
入社した時に担当した子が、昨年度卒業したのですが、その子は一番近い場所でその私の変化を見ていました。その子が卒業する際「変わったよね。」と言われた時は、本当にうれしかったです。
入社当時は、子どもと接する際のノウハウなどは何もなく、子どもたちからは「怖いお兄さん」と思われていました。子どもとの関係がうまくいかず思い悩んでいる時期に、施設がCSPを導入し、いままでの状況が一転しました。子どもの養育の仕方、携わり方がわかり、教えてほめていくことで子どもと良い信頼関係を築けることがわかりました。
施設でCSPを導入してから子どもとの関係は順調でしたか?
導入当初は順調だったのですが、だんだん子どもの問題行動が増え、その対応に追われる頻度が高くなってきました。その理由は、CSPを学んでいるものの、それぞれが自己流の考えを持ち、個別の解釈をするようになり、プログラムが停滞したからだと思います。
職員が2人1組で子どもをみるのですが、結果のサイズ、指導するタイミングが自己流の解釈になっていたため、2人の見立てのズレが生じるようになりました。その結果、子どもが職員によって行動を変える「人気投票状態」が起こり、現場が難しくなりました。
そんな中、ボーイズタウンのトレーナーから直接指導を受ける機会をいただき、改めてCSPを学びなおしたことによって、自分の解釈が違っていたことに気づき、教えられたとおりにプログラムを実行することの重要性を感じました。
CSPは学び続けることで、修正と練習を重ねます。そしてセットアップ・フィードバックというスーパーバイズ(SV)体制が構築され、それが般化されることで現場に活かすことができるのです。般化されたことにより、判断・対応のスピードが速くなりましたし、CSPを学んでいる職員の誰もが子どもに対して同じ対応をすることが出来るようになりました。職員間でCSPという共通言語が出来たことで、子どもだけでなく、職員同士の関係もよくなりました。
今、CSPを共通言語と表現されていましたが、現場で共通言語を持つことがなぜ必要なのでしょうか?
職員は自分の育ってきた環境や経験をベースに子どもと向き合いますので、子どもに対する反応も異なります。それぞれの家庭は、外国のようなもので、言葉も違えば風習も違います。ある家庭では、テレビを寝ながら見ているかもしれません。しかし別の家庭は、イスにちゃんと座って見なければならないかもしれません。
現場に共通言語があることで、子どもの支援に関して共通の指標と目標を定めることができ、建設的な話し合いがしやすくなりました。現場において共通言語を持つことは必要だと思います。
施設でCSPに取り組んだことによって、何がかわりましたか?
共通言語ができたことで誰でも同じ支援が行えるようになりました。以前は、近い担当間や主任としか子どもの援助や見立ての話がむずかしかったのですが、今は職員間の垣根を超えて話ができるようになりました。
私は学齢期男子の担当ですが、共通した基本的な考え方があるので、女子であっても小学生であっても話し合いができるようになりました。新人でもベテランでも、同じ土俵で意見交換ができ、提案もできます。
CSPを学ぶことで人間関係の構築にも役立っています。新人でも話がしやすく、上の立場の人も自分の経験を押し付けるようなこともなく、ストレートに話ができる環境が整っていると思います。はじめは上級指導者や管理者を目指し、猛練習していたのですが、今ではCSPが生活の一部になっています。
いま組んでいる先輩が5-6年ほど年上なのですが、それくらい年数が違う方とお話ができるのも、その方自体が謙虚に接してくださるのもありますが、やはり、ズレない見立てを出し合える、学んだものが一緒、というのは大きいと思います。
CSPの最大の特徴であるスキル練習ですが、どのようにお子さんと行っているのでしょうか?
私が担当している子どもの場合は、就寝前に一緒にスキル練習をする時間を個別に設けています。多い子は毎日行っていますが、頻度は子ども毎の発達段階によって変えています。例えば、能力が普通学級くらいで比較的自分でできることが多い子どもには、ロールプレイをするというよりは、「バイトで、どういうことあった?」という話をしながら、「そうか、指示に従ったんだね」とか「今度こういうことがあったら、アドバイスを受け入れるをやってみたらどうかな?」など、実際どのような場面で、どのように社会スキルを用いるのかを話し、練習を行っています。
CSPを導入して、子どもの反応に変化はありましたか?
「暴れるのではなく、どうすればいいのかを選べるようになってきた」ということでしょうか。小さな子どもは、自分自身の変化に気づくことが少ないと思いますが、長い間CSPと関わりを持っている子どもは、自分の変化を感じているようです。卒業した子なのですが「お兄さんも変わったけど、自分も変わったよね。昔は、騒ぐしかないとか、暴れるしかなかったのが、今はどう伝えればいいのかがわかる。これは、お兄さんから教わったんだ。」と言っていました。
この子のように、自分の変化を実感できるというのは稀なケースかもしれませんが、実感できなかったとしても、彼らはたくさんの事を日々学んでいると思います。
最後に、今後の抱負を教えてください。今後やりたいことはありますか?
まず個人の抱負としては、社会の中で子どもが社会スキルを使って成功できるように、CSPを学び続け、スキルや知識を深めたいです。 そして組織の一員としてやりたいことは、後輩の指導です。自分は10年目で、組織の中ではちょうど中間の立ち位置にいます。1~3年目の職員の養育スキルを引き上げ、4、5、6年と続けていくための土台つくりをサポートしたいです。
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